C児童生徒に1人1台の活用
中橋 雄 先生(武蔵大学 社会学部 教授)
①それぞれのワークショップで何があったか
ミニセミナーC 児童生徒に1人1台の活用 レポート をご覧ください。
②それぞれの形態で伝えるチカラを育むためには
タブレットPCが児童生徒1人1台あったとしても、授業に仕掛けがなければ伝えるチカラを育成することはできません。
●学びたくなる・伝えたくなる問いを設定する ―伝えたくなることで育まれるチカラ―
ミニセミナーで紹介された授業実践では、全体のテーマである「地雷」に関する事柄を個別に調べ、同じテーマを調べている生徒と議論した後、自分のグループに持ち帰り各テーマの情報を1つのスライドに統合して発表するという、ジグソー的な学習を取り入れた活動を行っていました。児童生徒が個別に学習をしたことが、後から他の児童生徒の学習の役に立つという仕掛けです。
このような「人の役に立つ」という目的意識・相手意識を持たせ、児童生徒が自ら「伝えたくなる」様な課題設定をすることが大切です。「やらされている」と感じてしまう課題では、伝えるチカラはうまく育成されません。
●自立解決と協働を組み合わせる ―伝え合うことで育まれるチカラ―
協働学習をする前提として、自立した学習ができていることが必要です。個別の活動、グループでの活動、クラス全体で多様な考え方を共有する活動を、どう組み合わせていくかを教師は授業デザインの中で考えます。同時に、それぞれの活動が効果的に行われているかどうかを見取り、適切に支援していく必要があります。
●伝え方の基礎・基本を指導する ―伝え方を学ぶことで育まれるチカラ―
道具を使って調べたり、まとめたり伝えたりする活動には子どもたちにも「慣れ」が必要です。まずは繰り返し様々な教科や領域で実践し、「伝え方の基礎・基本」を学ばせる。その上で、教師側の仕掛けとして「学びたくなる課題設定」や「自立解決と協働を組み合わせた授業設計」があると、相乗効果が生み出され、「伝えるチカラ」が育まれるのではないかと思います。
③それぞれの導入形態での環境整備や運用の工夫・配慮点は
タブレットPCが児童生徒1人1台あったとしても、授業に仕掛けがなければ伝えるチカラを育成することはできません。
●「いつでも」使える管理・運用体制
タブレットPCの充電がうまくできていなかったり、いざ使うときになって保管庫の前に児童の行列ができてしまったりするようでは、使いづらくて活用も進みません。
いつでも学習に活かせるよう、常に児童の手元に置いておくことがポイントです。壊れることを恐れるよりも、有効活用することを第一に考えましょう。
●身近な教材を取り入れる
タブレットPCにはデジタル教科書をインストールできるものや、カメラ機能で教科書や資料集を撮影できるものもあります。これまでも使ってきた身近な教材を取り入れた活用ができるので、気軽に活用していくことが大切です。タブレットPCを使うからと言って、授業準備に気合いを入れすぎて続かないようでは困ります。教師が撮った写真をワークシートとして配信し、書き込ませるだけの活用でも良いので「どんなことを書きこませて話し合わせると、学習がより深まるか」を考えて使うことが大切です。
●学級文化の形成
1人1台環境だと、疑問に思ったことを積極的に調べていくことができます。それは子どもたちの主体的な学びを必ず支援してくれます。一方で「学年の学習内容を超えないようにしたい」といった「文化」があることも事実です。子どもたちの「学びたい・伝えたい」という主体的な学びを推奨するために、これまで学校で行われてきた「当たり前」の学習を変えていくことになるかもしれません。