実践の内容
今回の実践発表は、交流している輪島市立門前西小学校の子どもたちが修学旅行に訪れるタイミングに合わせ、金沢の観光アプリをつくるというもの。自分たちが調べたことの関連性を見つけ、構造的に捉える、という部分で〈E-VOLVOX〉を活用し整理した。
単元は総合的な学習の時間23時間+国語科6時間で行われた。第一次では国語科で身の回りにある様々なメディアの特性を調べ、そのひとつとしてアプリがあることと、それを動かすプログラミングについて学んだ。第二次には実際に簡易アプリを作成し、門前西小学校の子どもたちやゲストティーチャーからの反応をもとに改善。第三次には本物のアプリにしたいという気持ちをもとに、自分たちのアイデアを金沢市の情報政策課の方に向けてプレゼンテーションするという流れで学習を展開した。今回は第二次を中心に実践紹介が行われた。
授業の流れ
①アプリづくりをする上で大切なことを考える
ゲストティーチャーとして、プログラミング教材の開発を行うハックフォープレイ株式会社の寺本さんを招き、アプリ開発にはコンセプト(だれが・いつ・どのようになるとよいか)が大事だという話を聞く。
②アプリのコンセプトを明確にする
門前西小学校から届いた手紙をもとに相手の知りたいことは何なのか考え、考えが近い3人でグループをつくり、アプリのコンセプトを決める。
例)
誰が | : | 門前西小学校の子どもたちが |
いつ | : | 来る前・来た後はもちろん、修学旅行の最中にも |
どうなる | : | 21世紀美術館が屋内から屋外まで年齢に関係なく楽しめることを感じてもらう |
③アプリをつくる上で必要な情報を集め、関連づける
E-REPORT COMPを使い、施設や工芸品などそれぞれの項目ごとにひとつのページに情報をまとめる。さらに、それぞれのページをどのように組合せたらよいかを〈E-VOLVOX〉を使って分類・整理し、設計図をつくる。アプリが意図した通りに動くかお互いの設計図を確認し、指摘し合う。
詳しい機能は製品紹介ページをご覧ください。
E-VOLVOX
④アプリを作成する
〈E-VOLVOX〉で整理したアプリの設計図に立ち返りながら、プロトタイピングツールで実際にブラウザで起動できる簡易アプリを作成。
授業デザインのポイント
●探究的な学習サイクルに位置づけたプログラミング教育
総合的な学習の時間において重要視されている探究的な学習サイクルの中にプログラミング学習を取り入れることを意識した。学習を教室の中で完結させないよう交流学習を中心に据え、アプリをつくる過程においては、「課題発見」「情報収集」「整理・分析」「まとめ・表現」というサイクルの中で、様々な最適解を求める場面が生まれるようにした。
●プログラミング的思考を可視化する
情報をどのように組み合わせれば意図した動きを実現できるのか考えることがプログラミング的思考が働く部分だと考え、〈E-VOLVOX〉でこの部分を可視化できないかと考えた。実践では、「メンバーに伝える時に口頭ではうまく伝わらなかったところが、設計図をつくったことで伝えることができた」「頭で考えている段階ではうまくいくと思っていたが〈E-VOLVOX〉で動かしてみたらアプリが止まってしまうことがわかった」という声もあり、プログラミング的思考が可視化ができ、意図した動きに改善するための気付きがあったのではないかと思う。
登壇後記
今回の実践では、アプリを作成する際に、プログラミング的思考を可視化するために、アプリの遷移図を〈E-VOLVOX〉で表現した。〈E-VOLVOX〉を遷移図として、活用した事例を具体的な映像とともに説明することができた。発表終了後、「〈E-VOLVOX〉の新たな活用方法のヒントをもらえた。」という反応があったことが嬉しかった。一方で、アンケートのなかに、アプリを作る際に活用したアプリはどのようなものであったかの説明がほしかったというご意見があった。時間の関係上、その点については省略していたが、次回同様の発表があった際には、さらに具体的に説明をしたく思う。あらためて、他者に自身の実践を語ることの難しさを感じた。