実践の内容
宮谷小学校では総合的な学習の時間を使って「健康総合科」という取組みをしており、国語科や社会科と組み合わせてカリキュラムを組んでいる。4年生は『おいしさいっぱい旬のもの 4の2なりの解決project 神奈川の食卓をエンハンス!』というテーマで、1年を通して地産地消や旬の食材を扱うシェフに協力してもらい学習を進めていく。今回は、その中でも国語科として、目的意識・相手意識をもって新聞制作を行った部分を中心に実践紹介がされた。
授業の流れ
訂正とお詫びの記事を見つけた児童は「正確な記事を書かなくては」と責任感を高めていた
教師の例として、購入した甘夏の袋に入っていた連絡先からHPを探したことを紹介
「栄養」と「選び方」の2つの内容で迷う児童に対し、伝えたいことの優先順位を考えさせた
①”作戦会議”をする(学習の見通しをもつ)
子どもと単元名と学習目標を共有する。他の教科と結び付けて考えていくため、教科ごとにどんな力をつけていきたいのか整理する。
②新聞を見る
本物の新聞を見て形式をつかみ、学校司書の先生におすすめの記事を紹介してもらったり質問に答えてもらったりする。新聞の完成イメージを教師の作例を見せながら共有することで意欲を高める。
③情報を集める
情報を集める際には、「人・もの・こと」を入口にするように意識させる。まずは社会科副読本や地図帳、給食の献立表、栄養士への質問、スーパーや道の駅などで調べ始めることに。社会科や健康総合科と関連させて学習していたこともあり、手元にある身近な資料から注目する食材を見つけて、本やWEBでより深く調べるという流れで行うことができた。
④情報を整理する
「買いに行ってみたい」「食べてみたい」と読んだ人に思わせるためには?ということを意識し、情報を整理する。
⑤記事を分析し、実際に書く
教師の作例をもとに、どのような文章構成になっているのか読み取り、分析をする。また、付け加えの段落である第三段落に配置する内容としてふさわしいものを考える機会も設ける。
その後、〈キューブきっず〉の「新聞」を使用して記事を書く。
⑥見せる
新聞を見せる機会を学級→保護者→シェフ・栄養士と3段階設ける。専門家からは、記事の正確性や読み手への意識について指摘があり、厳しい意見がよりよい新聞へと改善する意欲を高めた。
⑦振り返る
自分が身に付けた力や最初に整理した教科ごとの目標について振り返った。
授業デザインのポイント
●修正が容易なことが、デジタルの強み
やり直しが簡単にできたことで、何度も構成の検討を行い、思考の深まりと納得感につながった。また、日付を入れてファイル保存することで、前の状態に戻すこともできると同時に学びのポートフォリオとなり、教師側が進捗や変更点を確認することができた。
●フィードバックにより、深くなっていく学びに
制作物に対するフィードバックを様々な立場の人からもらうことで、次の課題が見つかり、「問い直す」「読み直す」「考え直す」「調べ直す」「書き直す」といったことを繰り返していく姿が見られた。こうしたプロセスを通した「深くなっていく学び」を大事にしたい。
●”作戦会議”を大事に
子どもたちと行う”作戦会議”では、こだわりを持って単元名を決めている。「誰にどんなものを見せたいのか」ということを考え目的意識と相手意識が入った単元名を作るようにしている。
学習計画については、以前学習したこととのつながりを大事にし、今回も3年時の報告文を書く学習で習得したことを思い出させたり、報告文と新聞を比較させたりするところから始めている。また、以前国語科で扱った物語に登場した夏みかんと、給食に出た甘夏を比較し「同じみかんの仲間でも旬が違う」という疑問を拾うなど、子どもたちの関心を探りながら学習計画を立てている。
登壇後記
今回は、実践発表の機会をいただきありがとうございました。
子どもたちに「伝えるチカラ」を育成していくことをねらいにして考えた授業デザインでした。書くこと、読むことに苦手意識をもっている子どもにとって、それを乗り越えて「伝えたい」と強い思いをもてるよう仕掛けていくことが一番の肝になります。学年みんなで子どもたちも教師も熱くなれるそんな授業づくりをしたいと願いました。
さらに今回は、「新聞を作る」という言語活動において、子どもたちの思いが表現しやすいアプリケーションの活用が追い風になりました。
読み手からの反響を受けて、さらに次の課題を話し合う子どもたちの様子についてお話ししましたが、私にとっても、このセミナーでの聞き手の先生方からのフィードバックがたいへん参考になりました。