実践の内容
国語の授業で、大人が行うものと同じルールで句会を行いました。〈E-VOLVOX〉を活用して「取り合わせ」の俳句の作成に取り組みました。
授業の流れ
季語の「プレート」は教師が準備し、AirDropで児童のタブレット端末に配布した
※画像はイメージです
①俳句のつくり方の違いに気づかせる
「ソーダ水」という夏の季語について児童がつくった俳句と教師がつくった俳句を見比べ、児童の俳句が「一物仕立て(季語の説明を中心とした俳句)」である一方、教師の俳句が「取り合わせ(季語とは関係のないことと季語を組み合わせる)」であることに気付かせる。
●児童の俳句=ソーダ水を説明している俳句
- ソーダ水 ぱちぱちはじけて おいしいな
- のどかわく これを飲んでね ソーダ水
●教師の俳句=関係ないこととソーダ水の組み合わせの俳句
- 二重飛び 八回飛べた ソーダ水
②「取り合わせ」の良さに気付かせる
「季語が変わったら俳句の設定が変わる」ことに着目し、教師のつくった俳句の季語を変えてその効果を感じ、良さに気付かせる。
-
二重飛び 八回飛べた チューリップ (春の季語)
→子どもたちの感想:カラフルで良い -
二重飛び 八回飛べた 冬の月 (冬の季語)
→子どもたちの感想:たくさん練習していつの間にか夜になった感じ
③句会を行う
宿題として俳句の種を3つつくってくる。
【1時間目】季語の選択と投句
季語は当日に発表(席題)。10個の季語(春の季語5つ、夏の季語5つ)の中から選択し、「取り合わせ」の俳句をつくる。〈E-VOLVOX〉を使って、どの季語を俳句の種に当てはめるのが良いか、吟味する。一番良いと思った句を無記名で短冊に書いてエントリーする(投句)。
〈E-VOLVOX〉の階層分け
第一階層 | つくってきた俳句の種(3句) |
第二階層 | 季語 |
第三階層 | 取り合わせた効果についてのメモ |
●児童がつくった俳句の種
- チャイム鳴る 急げグランド ○○○○○
- 逆上がり 世界逆さま ○○○○○
- ばあちゃんの 不思議な話 ○○○○○ ×季語 (春の季語5つ、夏の季語5つ)
- その勝負 まだ終わらぬか ○○○○○
- ありがとう 魔法の言葉 ○○○○○
●児童がつくった取り合わせの俳句
- チャイム鳴る 急げグランド 雲の峰 (夏の季語)
- 逆上がり 世界逆さま つばめ飛ぶ (春の季語)
- ばあちゃんの 不思議な話 あまがえる (夏の季語)
- その勝負 まだ終わらぬか 南風 (夏の季語)
- ありがとう 魔法の言葉 夏近し (春の季語)
【2時間目】清記、選句、講評
作者を特定できなくするため、俳句を配りなおして大きな短冊にきれいに書き直し(清記)、番号を付けて貼り出す。気に入った句に一人2票ずつ投票(選句)。最後に作者の発表と投票した理由、句をどう解釈したかをクラス全体で共有する(講評)。
④振り返り
子どもたちは季語が変わると俳句の「感情」が変わることに気付いた。
●子どもたちの感想から
- 季語によって全然違う句が出来上がります。思っていたことを句にするというよりも、句にしてから物語を想像するということが新鮮で、取り合わせのことがよくわかりました。
授業デザインのポイント
●良い句をつくるためのツールとしてICTを活用
ICTを使うことが目的ではないが、良い俳句をつくるために役に立ちました。子どもたち本人も「よく考えた」という達成感があったと思います。
●子どもの思考の課程を収集
子どもたちが〈E-VOLVOX〉上で考えた思考の課程が「リング」や「プレート」として残っています。子どもたちの間で俳句の作成過程を共有することも容易ですし、最後にAirDropで教師の端末に転送してもらうことで評価にも役立てることができます。
●今後の目標は階層設定を自分でできるようになること
今回の〈E-VOLVOX〉の階層の使い方の設定は教師が設定しましたが、「各自の思考ツール」としてこのアプリケーションを使いこなしていくには、階層の使い方まで自分で考えられるような実力をつけていくことが求められると思います。
発表の様子
子どもたちの俳句の出来に受講者の先生方は感心されているようでした。質疑応答では〈E-VOLVOX〉の活用について注目が集まりました。