実践の内容
理科の遺伝の単元で、メンデルの法則を説明するための、プレゼンテーション用データを作成しました。「誰に聞かせても納得できるようなプレゼンをし、生きている間に世の中に認めてもらうことができなかったメンデルの無念をはらせ」というテーマ設定の元、生徒たちはグループで、メンデルの法則が正しいことを立証するための材料集め(遺伝の各種法則の理解・モデル実験等)を行います。プレゼンテーション用データの作成には〈E-VOLVOX〉を使用しました。
授業の流れ
グループで教え合いが発生する
実験に必要なものや調べ学習に使える書籍、話し合いで使うホワイトボード等は教師があらかじめ準備しておく
①教科書の内容を理解する
教科書を自分たちで読み、メンデルの法則に関する基礎知識を身に付ける。
②発表の準備をする
〈E-VOLVOX〉の特徴を活かし、説明の途中で意図したながれとは違う質問を受けても答えられるようなプレゼンテーション用データを準備する。1グループに2台のタブレット端末を配布し、並行して2つのデータを作らせ、最後に1つにまとめて完成させる。
〈E-VOLVOX〉の階層分け
第一階層 | メインストーリー(広く・浅い内容) |
第二階層 | 具体的な説明 |
第三階層 | さらに詳しい用語の解説(深く・狭い内容) |
③グループ内で中間プレゼンを行う
詳しいところまで質問してもらい、足りない部分を検討していく。
④プレゼンをより説得力のあるものにする
最終的に、お互いの発表について評価表を基に評価させ、それを成績にも反映させるようにした。
授業デザインのポイント
●ツールの使い方や話し合いの仕方をマスターしておく
生徒たちに1学期を通してツールの使い方や話し合いの仕方をマスターさせておくと、今回のような結論から逆算する調べ学習主体の課題でも、経験を活かして自分たちで学習を進めることができます。
●深い学びのために子どもたちに求めること
聞いている生徒にはただ黙って聞いているのではなく、おかしいと思ったらとにかく質問をすることを求めます。反対に、発表をする生徒には、途中で質問が出てもしっかりと最後まで発表するということを求めます。その過程に起こる質問を予想し、教科書の記述やモデル実験の結果を根拠に対策をたてるといったことが、学びを深くしていくのだと思います。
●子どもたちに身に付いたこと
授業後の振り返りから「自分が知っていることが全てではなく、多様な価値観や視点を得るという姿勢」「意見を否定せず、適切か確かめようとする態度」等が身に付いたといえると思います。また、グループで学ぶ価値(足りない部分をお互いに補い合って学んでいく)にも気付くことができたようです。
●学びを子どもたちに託していく
ノートの取り方や座り方など、基礎的な指導はもちろん必要なのですが、徐々に子どもたちに学びを託し、自ら気づかせる形に持って行くことが必要なのではないかと思います。子どもたちは学びたいと思ったことは自然と身に付けていきますので、その気持ちをいかに引き出すかを考えていくことが大切なのではないかと思います。
発表の様子
先に結論から発表し、その根拠を求めていくという一般的な授業とは逆の流れに興味を持った受講者の先生方が多かったようです。時間配分の工夫等に注目が集まりました。