基調講演

放送大学の中川一史先生より、基調講演をいただきました。

放送大学教育支援センター 教授

中川 一史

略歴 横浜市の小学校教諭、金沢大学教育学部教育実践総合センター助教授、略歴 メディア教育開発センター教授を経て、2009年4月より放送大学教授。

学校現場の現状

新学習指導要領が小学校・中学校・高等学校の順に先行実施の時期に来ています。小学校では外国語・外国語活動、特別の教科としての道徳、そしてプログラミング教育と、色々な新しい取り組みについてどう行っていくのかということが検討されている時期ではないかと思います。
今日ここでお話ししたいのは、新学習指導要領で重点が置かれているものとICTは非常に親和性が高いということです。
図1は文部科学省から出ている学校における教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018~2022年度)です。タブレット端末を3クラスに1クラス分程度整備と書かれています。また、ICT支援員を4校に1人配備とも書かれています。なかなか厳しい内容です。
整備のために必要な経費は、2018年度から2022年度まで単年度1805億円の地方財政措置を講じることとされています。しかし従来からこのような財源は自治体の一般財源の扱いになり、他の用途に使われてしまうことも多く、自治体格差が出てきてしまっているのが現状です。

新学習指導要領 資質・能力の三つの柱

平成29年3月公示の学習指導要領ですが、中央教育審議会のまとめと答申の段階で「社会に開かれた教育課程」の実現に向けて、資質・能力の三つの柱が「何を理解しているか、何ができるか(生きて働く「知識・技能」の習得)」「理解していること・できることをどう使うか(未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成)」「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養)」とされました。また、それまで言われてきた「アクティブ・ラーニング」という言葉に代わり、「主体的・対話的で深い学び」という言葉で一元化されました。さらに、「何を学ぶか」という点では、「家庭や地域社会と連携・協働しながら未来の創り手となるために必要な資質・能力を育む」とされました。この大方針に従って、三つの柱が組まれ、それぞれにこれからの学校教育にとって大切なことが盛り込まれているという建て付けになっています。

情報活用能力とは

もう一つ、「情報活用能力」がこのセミナーのキーワードです。
「情報活用能力」は3観点・8要素で表されます。
中心となるのは、「情報活用の実践力」。それからいわゆる情報モラルを含む「情報社会に参画する態度」。そしてプログラミング教育が必修化され、小学校でも本格的に扱われることになる「情報の科学的な理解」。
この3点をどのように各教科・領域の授業に落とし込んでいくかということを、改めて考えていくべきだと思います。今回のセミナーではタブレット端末をはじめとするICT環境とソフト・アプリケーションを使って、そのあたりを考えてみたいと思います。

ICTの位置づけの変遷

ICTはこれまで主に教師が使うものでしたが、現在では児童生徒が学習用としてどのように使っていくかという検討に入ってきています。本来一人ひとりが使うICTのツールは自分で判断をして各自の思考ツールとして使うという活用が望ましいと思います。
そこには新奇性はなく、単なる道具として使うという状況です。児童生徒が学習で使う場合にも同じような状況がつくられることが、今私たちが目指すべきところなのではないでしょうか。そのようなことを考えながら、ぜひ本セミナーに参加していただければと思います。

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