ミニセミナーBグループに1台での活用

グループに1 台のタブレット整備における活用として進行役の浜松市三ヶ日西小学校・菊地先生より〈E-REPORT COMP〉を使った5年生・社会でのCM作りや6年生・国語での学校紹介リーフレット実践を紹介いただきました。
グループで作成を進める上でジグソー的な学習を取り入れたり、話し合いの場の設定をする等、授業の進め方の工夫をご紹介いただきました。

【進行】 浜松市立三ケ日西小学校 菊地 寛 先生
【講師】 金沢星稜大学
浜松市立中瀬小学校
佐藤 幸江 先生
有谷 剛仁 先生

菊地先生による実践事例紹介

iPad 用表現活動支援ツール<E-REPORT COMP>を、グループ1 台の導入形態で使った実践を紹介します。グループ1台で使った理由は2つです。一つ目は、「動画、画像」と「文章」を組み合わせで、いかに表現するかをしっかりと考えさせたかったからです。二つ目は、対話の場を作りだしたかったからです。これを踏まえて、活用アイデアとして実践例を2つご紹介します。

5年 社会 ―ジグソー的な学習― 児童同士の対話を促す

あたたかい土地と寒い土地の特徴をとらえる単元です。学習のゴールとして、グル-プで沖縄と北海道の良さをCMにまとめようと投げかけました。

学習の流れとしては、まず、6人のグループの中で担当するテーマを一人ひとり振り分けます。それぞれの班の担当者が集まってテーマごとに集まって調べ学習を行い、また元のグループに戻ってきて、北海道と沖縄の良さをまとめさせました。

この実践では、児童同士の対話を促すために様々な仕掛けをしました。まず、ジグソー的な学習※です。ジグソー的な学習では、1つのテーマにつき、班の中で調べる人は自分1人しかいません。そのため、児童は担当者としての責任を感じ、積極的に調べ学習に取り組むようになります。また、元のグループに戻ったときに調べ学習でわかったことを必ずメンバーに説明しなければなりません。さらに、そこからまとめの話し合いに入るので、自然と児童同士の対話が生まれていくのです。

CMはE-REPORT COMP で作成しました。ページに写真とキャッチコピーを入れることでCMとしたのですが、ここで「CMに入れる写真は4枚まで」というルールを設けました。調べ学習自体は6テーマに分かれて行いましたので、各グループで話し合いを始める時点では、6つの資料があることになります。つまり、ルールに従ってCMを完成させるには、どれかを選ばなければならないので、そこで必然的に児童同士の対話が起こる仕掛けです。

さらに、教師の支援として、各グループの様子を見取りながら、必要であれば介入をしていきました。テーマごとの調べ学習の段階では、全員がきちんと理解できているか確認して回ります。理解していなければ、元のグループに戻ったときに他の児童に説明することができないからです。グループでのまとめに入った後も、児童が調べたことを記録しているところに赤を入れ、「これどういうこと?」と質問をして回り、答えられないことがあった場合は、さらにグループで話し合う必要が出てくるのです。

このように、対話が必要になる場面を意図的に生み出しながら学習を進めていきました。

★佐藤先生からのコメント

グループ1台の活用の場合は、声の大きい児童の意見につられてしまったり、話し合いが焦点化されていなかったりして、なかなかうまくいかないことがあります。授業のねらいに迫っていないグループに対しては、やはり教師が入って指導していく必要があります。
また、教科の狙いに加えて、伝えるための資質・能力を育てたいという思いもあると思います。教師がねらいをもって、「グループ内での話し合い」や「ジグソー学習」を取り入れる等、授業デザインをしていくことが大切ですね。

6 年 国語 ―リーフレット作り― 動画や画像、文章での表現を追求させる

国語のリーフレット・パンフレット作りの単元です。今回の実践では学校紹介のリーフレットを作りました。学習のゴールとして、交流している他校の児童に向けて学校紹介のリーフレットを作ろう、ということで進めました。今回は有谷先生のいらっしゃる学校と交流をしました。

学習の流れとしては、まず、各グループで学校のいいところを付せんに書き出し、班で話し合いながらリーフレットに掲載する優先順位をつけていきました。それを元に、一人ひとりがデジタルレポートを作成した上で、グループで1 つのリーフレットにまとめました。一通り出来上がった段階で、リーフレットを他のグループに見てもらい、アドバイスをもらいながらブラッシュアップしていきました。最終的に完成したリーフレットは交流先の学校に送って、読んでもらいました。個人でのレポートとグループでのリーフレットの作成にE-REPORT COMP を使用しました。

評価のポイントは、国語の教科の狙いに沿った観点と資質・能力の育成の観点の両方の視点から見ていることです。具体的に挙げると以下の通りです。

【国語の教科のねらいに沿った観点】

  • 文章を書くときに「事実」と「意見」を分けているか
  • 私たちの学校のことを知らない交流校の児童、つまり「相手」を意識しているか

【動画のねらいに沿った観点】

  • 動画・画像と文章の関連ができているか
  • 写真で表現しきれないことや、写真で表していないことを文章に書いていないか
  • リーフレットは見やすい配置になっているかどうか

この実践で、グループ1 台のタブレットPC 活用をした狙いとしては、2つあります。1つ目は、社会の実践と同じく、画像を選択したり、紹介文をまとめたりする過程で児童同士の対話を生み出すための仕掛けです。2つ目として、「どちらにしようか」という選択だけでなく、話し合う中で新たなアイデアが出てくることを狙っています。

また、資質・能力を育成するために、動画や画像、文章といったコンテンツを使い、いかに分かりやすく表現するかを追求させたいと考えていました。そのために、実際に作成に入る前に動画と写真を提示しながら、それぞれの特性を考えさせました。リーフレットの作成に入った際には「この場面では景色の画像を見せる」「動きがあるものは動画」と自分たちで考えて使い分けをするよう意識させました。加えて、動画については、アングルや挿入する数についても話し合わせ、適切に扱えるよう指導していきました。

実際に完成したリーフレットは、以上のような指導や工夫の元、児童同士でアドバイスをし合いブラッシュアップをかけたこともあり、より読み手の目線を考えたものになっていました。

★有谷先生からのコメント

今回、菊地先生のクラスと交流させていただきました。実際に送られてきた学校紹介パンフレットを見る子どもたちは、まず「動画」や「画像」、「大きなタイトル」等、視覚的に工夫されているところを見て内容に興味を持ち、「文章」へと視点が移っていっているようでした。上手く視線の誘導ができていたと思います。写真や色、様々なコンテンツが組み合わさった上で、見やすいリーフレットが完成しているので、成果としては非常に質の高いものができていたと思います。結局PCであっても、紙であっても、教師の意図がある課題設定がなければ結局いい成果物はできていかないのだと思います。

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