ミニセミナーA先生に1台での活用
先生に1台のタブレット整備における活用シーンについて、進行役の金沢市立十一屋小学校・福田先生を中心に活用の紹介がありました。それをふまえて、セミナー参加者自身で「先生に1台タブレットPCがあったらどんな活用をしたいか」を考え、その場でアイデアを共有しました。
【進行】 | 金沢市立十一屋小学校 | 福田 晃 先生 |
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【講師】 |
茨城大学 金沢市杜の里小学校 |
小林 祐紀 先生 田口 優 先生 |
福田先生による活用アイデアのご紹介
先生に1台ということで、関わりやすい導入形態かと思いますが、授業の中の一体どんな場面での活用になるのかというと、「何かを提示する」場面が多いのではないかと考えています。具体的に、どのような活用の仕方・パターンが考えられるか、実例を交えながらご紹介していきたいと思います。
●見せる
黒板の横にマグネットスクリーンを貼って映像を観ています。従来であれば、もし、クラス全体に画像等の資料を提示しようと思ったら、職員室にある拡大機で、休み時間等を使って拡大コピーをしておかなければなりませんでした。
しかし、タブレットPCがあることによって、事前に準備したものはもちろん、教科書の一部や子どもたちのノート等、教師が「これを見せたい」と思ったものを撮影して簡単に見せることができるようになります。
●撮る→見せる
体育の逆上がりの授業で、電子黒板を使って映像教材を提示し、運動の見本を児童に見せています。この後先生は、実際に児童が逆上がりした様子を撮影し、手本と並べて再生して見比べさせました。
●撮る→大きくする
社会の昔の道具について学習する単元で、児童が家で見つけたものや、調べたものの写真を持ってきます。ある児童は昔の硬貨の写真を古い文字が書いてある部分を拡大して提示しながら、話をしていました。このように大きく提示することで、より伝わりやすい説明をすることができ、他の児童の理解も深まります。
●書き込む
タブレットPC上で画像に書き込みをしながら説明していました。考え方を書き込んだ画面を黒板に投影しながら説明をすることで、視覚的にも情報が伝わるようになり、よりわかりやすい説明になります。
●動かす
小学校の算数の授業では、「三角形の内角の和が180°になる」という学習をします。従来は、三角形の教材をはさみで切って動かすなどして他の児童と考えを共有する際には、出来上がった成果物(=結果)だけを提示して説明することが多かったのではないでしょうか。教材アプリケーションでオブジェクトを動かしながら説明すれば、考える「過程」も見せることができ、具体的な理解に繋がります。
●聞く
音読の手本や音声教材など、教師が聞かせたい音声を聞かせるということもできます。
ここでご紹介したアイデアは、どれも普段学校生活の中でしていることの延長線上にある使い方だと思います。
★田口先生の活用アイデア
私がよく使っているのは、授業の導入場面です。たとえば、3 年生の社会科の身近な地域の学習をする単元で、地域の写真を撮ってきて提示し、「どこにあると思う?」というなげかけから始まり、地形の学習につなげます。
受講者の先生方の活用アイデア 「先生に1台タブレットPCがあったら…」
配布されたワークシート
配布されたワークシートを元に、受講者の先生方にも「こんなことができたら良い」「こんな場面で使いたい」というアイデアを考えていただきました。3分間のシンキングタイムが設けられ、他の先生方とのアイデアの交流のあと、2名の先生方から活用アイデアの発表がありました。
●特別支援学級での指導に
特別支援学級でマンツーマンの指導を受けている児童が普通学級で学習する、いわゆる通級の際の活用アイデアです。文字を読む課題が出てくると、躓いてしまう児童がいます。そこで、学習の中で単語が出てくる場合は、あらかじめ画像や映像をタブレットの中の教材に貼り付けて置き、「こういうものです」と具体的に示すことで、躓きをなるべくなくすという使い方をしています。
★福田先生のコメント
通級の児童を対象として、個に応じた支援をされているということですね。通級の児童に限らず、授業になかなかついて来られなかったり、ある特定の場面で躓いてしまったりする児童というのは、少なからずいると思うんです。そのような児童に向けて、タブレットPC で何か支援ができるのかもしれません。
●理科の授業のイメージを提示
「見せる」「動かす」という活用にあたると思います。5 年生の理科のアイデアです。
ものの溶け方を扱う単元で、ビーカーの中に水を入れ、砂糖を混ぜて溶かすという課題がありますが実際に混ざる様子を示すのは難しいことです。プロの作ったアニメーションでも良いのですが、それを色の違うBB 弾で実際に動かして、ゆすると全体が混ざっていく様子を示す教材を自分で作れるなと思いました。
★福田先生のコメント
自作教材のあり方が変わってくるのではないか、というアイデアをいただきました。粒子が混ざる過程について、口頭の説明だけでイメージするのは難しいと思います。ところが、映像が1つ提示されるだけで、「粒子が混ざるってこういうことなんだ」と理解しやすくなりますね。目には見えない現象を理解させる上で、タブレットPCでの映像提示が担う役割は大きいと思います。
講師の先生方からのコメント
●福田先生
先生に1台のタブレットPC の活用では、授業が劇的に変わるというようなことはまずないと思います。しかし、以前まで出来なかったことが、可能になるという些細な変化だけで、子どもたちの学びにとっては大きな変化になってくるのではないかと思います。
例えば、「この部分を見て」と電子黒板で画像を示すだけでも、子どもの目はパッとあがります。こうした小さな変化の積み重ねが子どもの学びを変えていくのだと思います。
●田口先生
先生に1 台のタブレットPC活用は、導入場面だったり、子どもたちの考えに揺さぶりをかけたり、体育での実際の自分の動きだったりと、「子どもたちに疑問を持たせて、新たな視点に気付かせる」場面で使いやすいと思います。子どもたちの学びに関わる重要な場面で効果的に活用できます。
●小林先生
福田先生の仰るように、「先生に1台タブレットPC があったからといって、授業に劇的な変化は起こらない」。だからこそ、先生に1台のタブレットPC 環境というのは、「はじめの一歩」の活用だと思います。しかし、この一歩は、非常に奥が深いと思っています。
教員に1台ですので、活用場面でのコントロールが効くので、「ここをしっかり押さえたい」「この子にきちんと発表させたい」といった教師の意図が色濃く反映されやすいことがメリットだと考えます。
また、子どもたちにとって、少しでも学習内容の入力の仕方が違えば、出力の際に大きな違いになることがあります。だからこそ、手軽にはじめやすい先生に1台の環境といっても、大事に活用していって欲しいと思います。