ワークショップA先生に一台
■岡山会場 講師
佐藤 幸江先生 (金沢星稜大学 教授)
山本 直樹先生 (京都市立桂徳小学校 教諭)
■大阪会場 講師
佐藤 幸江先生 (金沢星稜大学 教授)
有谷 剛仁先生 (浜松市立中瀬小学校 教諭)
ワークショップのねらい
先生に1台という形態が最もハードルの低い導入形態ですが、これによってより先生主体の授業になってきているのではないかという傾向が見えてきています。そこで、今回は実際にあった授業の指導案を検討しながら効果的にタブレット端末を使う授業設計について考えます。
主なワーク
受講者には4~5人のグループになっていただき、実際に行われた、ある授業の指導案をもとに、問題点や改善点をグループで検討していただきました。
ワークショップの様子
① 実際にあった授業の指導案を確認
まずはじめに、佐藤幸江先生より、今回のワークショップの趣旨と、検討する指導案についての説明がありました。
タブレット端末は、先生に1台、子どもたちには紙のワークシートを配り、分かったことを記入させる授業でした。しかし、子どもたちはなかなか自分の意見を書くことができませんでした。どうしてこのような状況になったか、授業の問題点や改善点を考えていきましょう。
【検討した指導案】
配布された指導案
単元 | : | 5年生の社会科 水産業の盛んな静岡県 |
使用したICT機器 | : | 先生用タブレット端末・デジタルテレビ・デジタル教科書・映像教材 |
静岡県の水産業を取り上げ、国民の食生活や輸入との関係、水産業に従事している人の工夫、運輸の働きなどを通して、水産業の発達について考える単元。巻き網漁と一本釣り漁を比べながら一本釣り漁のいいところを見つけようというねらいの授業でした。
【授業の概要】
①デジタルテレビに巻き網漁の「写真」を投影し、何をしているところか予想する。
先生の指導
- マスク機能を使い、写真を部分的に提示。
- 児童が着目した点についてペン機能でマーキングをする。
②巻き網漁の「映像」を見ながら、気付いたことをワークシートに記入する。
③デジタル教科書でかつおの一本釣りの写真を提示し、何をしているところか話し合う。
先生の指導
- かつおを付せん機能で隠した状態で提示し、付せんをゆっくりはがしていく。
- 拡大機能を使い、魚を拡大提示する。
- 資料提示しながら、児童が着目した点についてペン機能でマーキングする。
④漁師さんたちはどうやって釣っているか体験する。
先生の指導
- 1本釣りの疑似体験をする。
- 自分が漁師だったらどちらのとり方でやってみたいか考えさせ、なぜ一本釣りをしている漁師さんがいるのかという疑問につなげる。
⑤本時の課題をつかみ、映像を見て一本釣り漁のいいところについて調べる。
先生の指導
- 「なぜ、一本釣りというとり方があるのか考えよう」という課題を提示する。
⑥全体で意見交流をする。
先生の指導
- デジタルテレビには、一本釣りの写真を投影しておく。
- デジタル教科書の動画を再生する。
- 映像教材を再生する。
⑦巻き網漁というとり方があるにもかかわらず、なぜ一本釣りというとり方があるのか調べ、個人でワークシートに記入する。
⑧全体で意見を交流する。
先生の指導
- あらかじめ作成しておいた予想される児童の意見の短冊を黒板に貼る。
② 指導案の問題点と改善案を検討
各グループにはタブレット端末が配布されており、受講者の先生方は指導案の中で使われているデジタル教科書や動画コンテンツを実際に使ってみて特徴を確認しながら、問題点や改善点を話し合いました。
グループでの検討の結果
- 授業のねらいとして、どんな資料を見せるのが効果的なのか検討したほうが良いのではないか。
- 一斉授業だけでなく、子どもたちが考える時間を捻出したほうが良いのではないか。
- 動画からどのようなことを読み取ればいいのか、事前に視点を確認しておくのが良いのではないか。
- 比較できる資料を提示することで、めあてに迫ることができるのではないか。
③ 佐藤先生によるまとめ
各グループで話し合い、まとめた問題点や改善点を発表し、全体で共有しました。そして、今回のワークショップの総括として、授業設計の観点からタブレット端末を利用するメリットや留意点についてまとめました。
【ワークショップのまとめ】
● デジタル教科書のメリット
- 資料の拡大表示/資料(メディア)の一元化
● メディアの特性を使い分ける
- ビデオ・写真 伝わり方の違い
● メディアによる資料提示スキル
- マーキング/マスキング
● とはいえ45分勝負
- 資料の量は適切か?
● 先生に一台のタブレット端末 教師主体の授業にならないように・・・
- 授業の「導入→展開→まとめ」の時間配分
- 学習形態「個別、ペア、グループ、全体」などを工夫しよう